よろめく素人の小言。

ふわっと、ふらっと生活を。

足音にんにん。鯖の味噌煮んにん。

「マジで足音しないよ」

 

にんにん。

どうも、僕です。

 

今日職場で、「お前、一切足音しないから本気で怖い」と言われました。

これまでも何度か言われたことはあったけど、どうやら本当に僕は足音がしないらしい。

 

歩き方なのか、死んでるのか、はたまた甲賀の里の末裔なのか。

多分最後のですね。僕忍者。甲賀流。にんにん。

にんにん。

 

なんて言っていますがきっと歩き方のせいでしょう。

昔、あれは多分小学校後半とかかな?

TVだか漫画だかで「踵から地面につけて歩くと静かに歩ける」的なのを見て、以来ずっとその歩き方になってる。

 

いいのか悪いのか。にんにん。

 

TVや漫画で見たことを真に受けて真似するなんてとても可愛らしいですね。

思い返せばあの頃は、24時間テレビやアンビリーバボーとかちょっと切ないドラマとかなんとか。そこら辺の「視聴者の涙腺に訴えかける系」のものにも、透き通った眼球で向き合っていたんだろうな、と。

 

はたや今は酷いもんで。その類いのと向き合うと吐き気がするにん。

なんなら向き合うこともほとんどないにん。

いつからこんなに腐ってしまったのだろうな。

 

いいのか悪いのかにんにん。

 

 

にんにん に ゲシュタルト崩壊

 

 

にんにん言ってるのも、全部テーブルの上のバドワイザーのせいにして。

 

にんにん。

水の上を歩ければ、どこへでも逃げれるのになと。

 

にんにん。

踵からすり減る僕の靴。

 

にんにん。

眠い。鯖の味噌煮が食べたい。

 

こんな風に、足音一つで昔を思い出したり。

24時を聞いては「中学校の校名『東から』とメッチャにてんだよな」と思って中学を思い出したり。

きっかけがなくても。昔を思い出しては今と重ねてなんだかやるせなくなったり。

なんだかね。そんな歳でもないのに。

 

 

 

なんて。なーにいってんだか。

毎夜のことながら酩酊してるのだ。にん。

ハチャメチャな文もそいつのせいにして許してくれ。

誰か鯖の味噌煮作ってくれ。誰か鯖の味噌煮作ったあとに僕を愛してくれ。

 

 

なんて。タイトルと一緒でジョークだよ。ほんとだよ。

そういうことにしておいて寝よう。膝がいてぇ。

 

 

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彼の中の堤防。

「俺、ケツの堤防ないんですよね...」

 

「は?」

 

職場の喫煙室にて。派遣で来ていた20過ぎの爽やかなイケメンが隣で呟いた。

呟いたというよりは、僕としていた仕事の会話の僅かな沈黙の間に、唐突に切りだした。

彼の指の間では、キャビンローストがゆらゆらと煙を立てていた。

 

(ケツの...堤防...?腹が緩いとか...? …は!まさか、今彼の肛門には津波が押し寄せていて、僕との会話なんかより早く御手洗いに駆け込みたいのを遠回しに…!? なんたる比喩!見事!)

と、一人あたふたしながら改めて彼に聞き直す。

 

「堤防...って?」

恐る恐る問いかけた僕の少し上で、彼は一口煙草を吸ってから答えた。

「堤防...?あぁ、堤防じゃなくて『抵抗』ですよ。気にしないでください、なんでもないですから」

「あぁ!抵抗ね。いや、堤防って聞こえたから腹緩いのかとか要らぬこと思ってたよ」

 

返せ。僕のあの一瞬のあたふたを。

なんてことは思っていても顔に出さずに、僕の指で暇してたハイライトを口元に持ってくる。

 

「すみません。お先に戻ります」

キャビンローストをすっかり灰にしたらしい彼が、そういって喫煙室を出ていった。

 

 

ハイライトが短くなってきた時。ふと、思った。思ってしまった。

「抵抗...ってことはあの時…」

そう、あの時彼は『俺、ケツの抵抗ないんですよね』そういったことになる。否、そういったのだ。

オレ、ケツノテイコウナインデスヨネ。オレ、ケツのテイコウナインデスヨネ。

頭の中で、ぐわんぐわんとその言葉が蠢いている。

 

ミステリー小説の終盤。大事な謎が解けたときのような「はっ!」という感覚を覚えるのとほぼ同時に、背筋に寒気が走った。

 

別に、他人の性的指向をとやかくいうつもりもないが、あのタイミングで大した仲でもない僕にいきなり、自身のケツ抵抗事情をさらけ出してきた彼自身に少し恐怖感ににたものを覚えた。

ケツの堤防も、抵抗もなくていいから、そこのリテラシーの堤防はあってくれ。

 

 

彼は明日も来るだろうか。

少し怖い。

 

そういえば、僕が喫煙室を出てそのまま御手洗いに行くと、丁度すれ違いで個室から例の彼が出てきた。

少し苦し気な顔で腹をさすっていたので、堤防のほうもなかったらしい。

ふぁ。

 

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追記

もうキャビンローストって言わないんだっけ。

 

 

 

 

 

 

何もかも無かった事にしたい。

 

深夜2時。明日も朝から仕事なのに、寝付けない。

一日が頭の中を駆け巡って僕を虐めてくる。

瞼を落としても、好きな音楽を聴いても、消えない過ち。

また、僕は罪を犯した。

取り返しのつかない罪を犯した。

布団にくるまり現実から目を背けるように、夢の世界に行こうとする。

でも、目は冴えていくばかりで精神は悪化する一方だ。

耐えられなくなり、飛び起きて飢えたように煙草に火をつける。

15mgの毒が体を駆け回って肺と心を汚して行く。

いつもより強く吸っても、喉が痛くなるだけだった。

 

外でサイレンの音が鳴っていた。

急に近づいてきて、一瞬で去っていく。

この憂鬱も同じようなものならどれだけ楽だろうか。

 

ニコチンが効かないなら、アルコールで誤魔化そう。

そう思った時に限って冷蔵庫には酒は不在で隣のコンビニまで行くハメになる。

上着をはおり缶ビールを2本買ってきて、また飢えたように飲み干す。

今度は8%の毒が脳と肝臓と心を殺していく。

少し視界がクラついた。

 

…それでも、憂鬱も過ちもまだ平然とそこに居座ってやがる。

 

どうしたらいい…どうすればいい…

打開策を考えようと頭を動かそうとするが、皮肉にも先刻のアルコールで頭が上手く回らない。

 

どうしようもないなと深い溜息をついた。

その瞬間僕の視線はいつも使うリュックに向いていた。

 

「……そういや、あれがあったなぁ…。」

リュックの中には数時間前、仕事帰りに職場から駅までの裏道で入手した「奴」が入っている。

奴というのも、今巷で密かに話題になっている例のブツだ。

入手こそ簡単なものの、手を出せばその作用の強さに依存してしまい抜け出せなくなる人達がここ最近尋常ではない数居るらしい。

同じようなブツに比べて多少値が張る代物だ。

内心、何度か服用を考えたが、依存の恐怖に少しおののき、手を出せずにいた。

だが、疲労と犯した罪の罪悪感に駆られていた僕は数時間前ついに奴を買ってしまっていた。

 

此処で飲めば楽になれる。

そう誰かが耳元で囁いてる気がした。

 

ゆっくりとリュックに伸びる手を止める理由は僕の中にはもうなかった。

 

「はぁっ…はぁ…」

気がついたときにはそいつはもぬけの殻になっていた。

空の容器を片手に僕はこの上ない、爽快感と満足感を得ていた。

これで、やっと僕の罪が洗われた気がしたんだ。

 

空の容器をテーブルにそっと置き、僕は眠りについた。

 

明日からだって、何度だって、何度罪を犯しても僕はそれをチャラに出来る代物を手に入れたんだ。

僕は気づかぬ間に奴に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食べ過ぎたその過ちに。

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※この記事は以前のブログで書いた記事の一部です。

ブログ変更の際に新しいこちらのブログで再投稿しました。

 

チョコチップパン・カウントダウン

2017年5月中旬

 

先日の大型連休が遠い日のように思えるこの頃。冷えた六畳間で僕は目を覚ました。

 

枕元の携帯に手を伸ばし電源を入れる。

寝起きの眼球には少し眩しすぎる液晶に『04:58/(月)』と映し出されていた。無機質な文字の奥ではムスッとした表情で、頬を赤らめた白髪の少女がこちらを見ている。

 

携帯の瞼を落とし、体を起こす。

まだ重たい体をなんとか動かして、背の低いテーブルの上からハイライトとライターを取る。

半分ほどに減ったソフトパックの中から一本だけを取り出し、乾いた唇に挟んで火をつけて、一口目を蒸し、二口目で肺に毒を吸い入れて吐き出す。

それを繰り返す度に六畳間を煙が満たしていく。

 

毎朝毎朝、ただの流れ作業でしかない一日の始まりはいつもどこか儚さが漂う。

その儚さも、随分と前に慣れてしまった。

 

フィルターの近くまで火が迫ってきたところで煙草を灰皿に捨てて立ち上がり、洗面台へ向かう。 顔を洗い終え部屋に戻る頃には、寝起きの体の重さも無くなっていた。

 

腰を下ろし仕事の支度をしようと思ったところで僕は大事なことを思い出し、テーブルの脇に転がっているコンビニの袋に手を伸ばして中を漁る。

「今日からちゃんと食う…」と独り言を言いながら、袋からチョコチップパンを取り出す。

近所のコンビニに売られているチョコチップパン。細いスティック状のパンにチョコチップが埋め込まれたあれだ。

 

昨夜煙草を買いにコンビニに出向いた際、レジ前の台に「期間限定一本増量中!108円!」との謳い文句でこいつは置かれていた。

普段なら買うことなどきっとないのだが、

「朝メシは軽くでも食べた方が良いぞ」と塩谷さん…職場の上司が言っていたことをたまたま思い出し、買ってみることにしたのだ。

 

朝というのはやはり気だるいもので、胃になにか固形物を入れるなどという事は僕にとっては苦行でしかない。そんなこんなで、生まれて二十四年ほとんど朝食を食べたことは無かった。

肺には煙を入れるくせに不思議なものだ。

だが最近、やけに体調が悪い日が続いたり、出勤早々の仕事でなかなか頭が働かなかったり「これは無理矢理にでもなにか食べた方がいいのか…?」と、一人考えていたのも事実だった。

 

そう思うと、このチョコチップパンは運命の朝食と言ってもいい。

低価格、糖分も取れる、なんと言っても「期間限定で1本増量中」だ。

普段なら六本入りのところが今は七本になっている。

七本というところが素晴らしく、毎朝一本食べれば一週間。一回買うだけで一週間。素晴らしい。チョコチップパンリスペクト。

まぁ、一本だけで朝食としての役割を担うのか?という懸念はある。

だが、こういうものは食べた「事実」と、それに伴う「実感」が重要なんだ。と、ふと思いついたそれらしい理論で懸念は解決させていよいよ実食といく。

封を開け、1本だけを取り出し四分の一程を齧る。

「美味い!!」 

と、言うほどではなかった。分かりきった事だ。僕もチョコチップパン童貞だったわけでもあるまい。チョコチップパンの味も知っていた。

ただ、いつも同じ事の繰り返しの朝に「チョコチップパン」という新しいものが加わった事で、少しだけ新鮮な感じがした。

あっという間に一本を食べ終えて、いよいよ仕事の支度へと取り掛かる。

支度も終え、一本ハイライトを吸ってから家を出る。

 

ー 仕事を終え帰宅し、一通りことを済ませて布団に入る。

いつもと変わらない一日だった。さしてチョコチップパンの効果が見れた訳でもなく、むしろ昼過ぎから頭痛が酷いくらいだった。

それでも、チョコチップパンを食べたことで僕はもう満足していたので、問題はない。

結局は「よければよいのだ」

明日もちゃんと一本食べようと決めてから、頭痛薬をのんで寝た。

 

火曜日

いつもなら、冷えた部屋の温度か目覚ましの音で起きるのだが、今日はチョコチップパンの臭いで起きた。嘘だ。頭痛で起きた。頭が痛い。

昨夜の薬が「効かぬわぁ!!」と頭痛サタンに追い返されたらしい。

五月の体調不良はやっかいなのが多いと、今更ではあるが実感する朝方だった。

痛い頭と重い体に鞭を打ち、煙草を燻らす。

ふいに頭を横に振る。ぐわんぐわんと、頭の中を鉄球が転がるような痛みが広がる。

「マジでいてぇ…」振った後に後悔する。

いつもそうだ。頭痛に襲われると、駄目と分かっていながらも頭を振ってしまう。謎の性だ。

 

僕のせいで増した頭の痛みを我慢しながら、チョコチップパンを一本取り出す。

半分ほどちびちびと食べ進めていたところでむせてしまった。チョコチップが喉と鼻の境目あたりで静かに僕を痛めつけている。

「くぁっ!珈琲…!」一人六畳間でチョコチップと格闘している自分を少し情けなく思いながら、冷蔵庫に鎮座する珈琲を求めて台所へと急ぐ。

一人暮らしの僕には少し大きい冷蔵庫を開けて、買い置きの缶珈琲を取り出して、それを一気に半分ほど飲み干した。

僕をいじめていたチョコチップはいなくなった。

朝っぱらからチョコチップに翻弄される僕の生活を思いながら、支度をして家を出た。

 

駅まで少し歩いて、満員電車に揺られて職場へ向かう。相も変わらず人が多い世の中だ。

新宿で降り、人混みを掻き分けて駅からほど近い雑居ビルへ入る。

エレベーターに乗り込み五階で降りて、

「株式会社 プレイズ人材派遣サービス」と表札のついたドアを開ける。

「おはよーございまーす」

ドアを開けながら精の無い声を出すと、同じく精の無い声が二つ返ってきた。

自分の席に座りパソコンを立ちあげる。

 

今日も昨日と同じように仕事をして、明日も同じく仕事をする。それが僕の生活で、十九の時にこの会社に勤めて以来ずっとそうだった。それはこれから先もきっと変わらない。

昔は、「金持ちになりたい」「有名になりたい」「働かずに生きたい」だのを思ったものだが、今はそんな事を思うことはなくなった。

勿論、そうなるに越したことはないのだが。生憎僕の人生も、僕自身もそう煌びやかではない事を知っている。

良くはない給料を稼ぐ為に朝早く起きて、金属の箱に詰められ出勤して、殺風景な事務所で仕事をして、たまに欠伸が出て、金属の箱に詰められて家に帰る。そして毎月決まった日にちになれば良くはない給料が振り込まれ、その給料で生活を続ける。

酒と煙草が買えて、衣食住に最低限困らなければ十分だ。十分だ。

幸せとか不幸せだとか、そんな事を考えるのは些か無粋だ。答えなどないだろうし、僕の頭はそれを考えるのにはスペックが足りない。

なんなら、チョコチップパンに一喜一憂する今の生活も十分幸せだろうし、頭痛に悩まされる今の生活は不幸せだ。

答えなどないのだ。ただ、つつましく日々を送れれば僕は十分だ。

 

そんなことをふと考えながら、今日もパソコンに向かい合っている。

 

いつものように仕事を終え、いつものように家に帰る。

帰り際、煙草を買いに近所のコンビニに寄った。少し悩んでから、バドワイザーを一缶だけレジに持っていって一緒に買った。

 

風呂上がりに、ベランダで夜風にあたりながらバドワイザーを呑んだ。

今日も頭痛は治らなかった。

 

水曜日

今日もまた頭の痛みで目を覚ました。

暗い六畳間で携帯の電源をつけると、いつも起きるより少し早い時間だったが、頭痛薬を飲むのに起き上がると、もう一度布団に入る気はなぜか起きなかった。

その分、いつもより早くチョコチップパンを食べ、いつもより早く出勤した。

 

ー 昼休み。同僚に誘われ近くの定食屋で昼食をとることにした。

食券機で「生姜焼き定食 580円」のボタンを押し店員に渡す。ここの生姜焼き定食は美味い。それ以外は微妙だ。生姜焼き定食だけが美味い定食屋。同僚はアジフライ定食を頼んでいた。

「お前いつも生姜焼きじゃない?他の食わないの?」

席につくと同僚が問いかけてきた。

「逆に、生姜焼き定食を頼まないやつの気が知れない」と愛想なく返すと「ふーん」と興味のなさそうな返事をした。

「そういえば!」と、生姜焼きなど忘れたかのように同僚が話し出す。

「お前、日曜の夜空いてる?『carotid artery』のライブなんだけど、用事出来て行けなくなってさ。行くならチケットやるよ」

「行くわ」

即答だった。

『carotid artery』は僕と同僚が共通で好きなインディーズバンドだ。インディーズとはいえど、メジャーデビューも目前と言われるほど人気のバンドだ。

数年前に他のバンドのライブを見にライブハウスに出向いた際、共演者ででていたのが『carotid artery』だった。抑揚のないコード進行と歌声の中に何処か感じる熱量と反する虚しさが僕を虜にした。

そのバンドのライブが今週の日曜に新宿で行われる。出会った当初とは違い人気が出てきた今は、チケットもすんなり取れたものではない。

今度のライブも、同僚はチケットがとれたが、僕は取れなかった。ツアーのファイナルということもありどうしても行きたかったライブだったので、まさかのチケット入手に心が踊る。

アジフライ定食を頼むような同僚が、今は神仏の類に思えて仕方が無い。

 

しばらくして料理が運ばれてきた。

今日の生姜焼き定食はいつもの数倍美味しく思えた。

 

昼休みも終わる頃に事務所に戻り、またパソコンに向かい合う。

仕事も未だに続く頭痛も、日曜を思えば少しだけ楽になった。

 

木曜日

チョコチップパンが半分を切った。

四日間もきちんと食べ続けたと思うと、少し達成感のようなものが湧いてくる。

出勤前の煙草を燻らせながら、そんな事を思っていた。

楽しみなことが出来たからだろうか、続いていた頭痛も少しは和らいだように感じる。

「明日は休みだし、帰り際呑んでこようか…」などと頭の中で今日を組み立てながら仕事に向かった。

 

今日も今日とてパソコンに向かい合う。

いつもより仕事量が多く、残業を覚悟していたがなんとか定時には終わらせることが出来た。

 

満員電車に揺られ最寄り駅までつくと、駅前を少し外れたところにある行きつけの居酒屋に寄った。

 

顔馴染みの店主と軽い挨拶を交わして、カウンター席に座る。広くも無ければ、綺麗でもない。どこにでもありそうな個人経営の居酒屋だが、どことなく温かさが漂うこの店を、僕はとても気に入っていた。

ビールと幾つかのつまみを頼み、煙草に火をつける。

 

店主との会話も挟みながら十分に酩酊したところで、帰り支度をする。

会計の時少しだけ料金をサービスしてもらった。遠慮はしたのだが「ずっと来てもらってるから、良いんだよ」との店主の言葉に甘えることにした。

「また来ます」と言い店を出て帰路につく。

恐らく赤くなってるであろう両の頬を、五月の夜風がそっと撫でていく。

 

家に帰るやいなや布団になだれ込んだ。

スーツのままで風呂にも入っていないが、明日は休みだ。酩酊して気分のいいまま眠りたい。

明日は…

考えてる内に寝てしまった。

 

金曜日

目を覚ますと部屋に白い光が差し込んでいた。

携帯を見ると無機質な白い字体で『10:24』と表示されている。

休みで良かったと思いながら、一つ息を吐き起き上がる。

とりあえずシャワーを浴びて、着替えて…チョコチップパンも食おう。と、考えながら浴室へ向かう。

 

シャワーを浴び終えて、部屋着に着替え終わる頃、頭の内側に鈍い痛みが走った。

落ち着きかけていた頭痛がまた出てきた。しかも痛みが増している。

慌てて頭痛薬を飲み、布団に横たわる。

「病院…行くか…」とぼやきながら考えるが、行く気力も起きない。どことなく熱っぽい気もする。

どうしようか迷いながら、とりあえず今日の分のチョコチップパンを無理矢理胃に押し込んだ。食欲など無に等しいが、ここで食べないのは何か癪に障る節があった。

改めてどうしようか迷っていると、携帯が震え始めて僕宛ての連絡を知らせている。

携帯に手を伸ばし見てみると近所に住む高校時代の一個下の後輩からだった。

彼女とは高校時代同じ部活だった事もあり仲が良く、卒業後も連絡を取り続けていた。

大学には行かず、地元を離れて就職した僕だったが、一昨年くらいに彼女から近所に引っ越したことを伝えられ、それからは割とよく会うようになっていた。 僕の家で呑んだり、馴染みの居酒屋で呑んだり、身体を重ね合うこともあったが、付き合っているわけではなかった。

そんな彼女からの連絡は

「今日休みですよね?呑み行きませんか?」

というようなものだった。文章の後には、よく分からないおじさんのスタンプも添えられている。

「それどころではない」と思いながらも、僕は彼女に助けを求めることにした。

一通り現状の説明をして、携帯と瞼を閉じた。

 

しばらくして、インターホンが鳴る。

立ち上がって出迎えるのは、今の僕には些か苦行の為、わざわざ電話をかけて「開いてる」と伝えた。

お久しぶりです、大丈夫ですか?」

と、言いながら彼女は家に上がってきた。

「大丈夫じゃない」と返すと、彼女は持ってきた買い物袋からスポーツドリンクを出して僕に手渡した。

「うーん、確に熱もありそうですねぇ…。風邪かなんかですかね」

右手を僕の額にあてながら彼女が言う。

 

少しの沈黙の後、彼女は見透かしたように僕にいう。

「私ここに居るので、先輩は寝てていいですよ。どうせ、病院行く気力ないでしょう?」

意味もなくお互いに目を合わせ、小さく笑いあった。

「そうする」と彼女にいい、また瞼を閉じた。

 

 

どれ位時間が経っただろうか?

目を覚ました時、彼女は台所に立ち、なにかを作っているようだった。

体調が良くなった訳ではなかったが、少し無理して立ち上がり台所へ向かう。

「何してるの?」と、彼女の後ろから顔を覗かすようにして尋ねてみるが

「おはようございます。病人は向こうで静かにしていてください」と、笑いながら一蹴されてしまった。

大人しく言うことを聞き部屋に戻る。

腰を落ち着けて、彼女が買ってきてくれたスポーツドリンクを一口のみ、煙草に火をつける。

食欲はないが煙草は吸いたい。不思議なものだ。

煙草を吸い終える頃になって、彼女が湯気のたったお椀を持って部屋に来た。

「お粥作ったのでどうぞ」と言いながら僕の前にお粥の入ったお椀とスプーンを置いた。

「お、流石。分かってる」

お粥はただのお粥ではなく梅粥だった。梅粥は体調が悪くなくても割と食べるくらいの僕の好物だった。

お礼を言ってから、粥を一口口に運ぶ。

梅粥は思っていたよりも美味しかった。思えば、彼女の作った料理を食べたのはなんだかんだ初めてかもしれない。家で呑む時も出来合いのものがほとんどだった。

梅粥とは別の暖かさをどこか感じながら食べる内に、お椀は空になっていた。 

 「ごちそうさま」と言って片付けようとするも、彼女が僕を遮って片付けてくれた。

 

煙草をまた一本吸ってから、薬を飲んで横になる。

洗い物を終えたらしい彼女が部屋に戻るなり

「今日泊まってもいいですか…?」と尋ねてきた。

僕は声は出さずに、一度だけ頷いた。

「シャワー借りますね」と言い彼女は浴室へ消えていった。

 

それから、彼女と身体を重ねた。

僕の体調を気遣ってか彼女が僕の上に跨っていた。

ー ことが済んだ後、明かりの消えた六畳間で僕達は寄り添って布団に入っていた。

眠りに落ちるかどうかという時になって彼女がキスを強請る。

「風邪。うつるかもよ?」と言うと

「今更ですよ。構いません。」と笑いながら返された。

それもそうかと思いながら唇を重ねた。

ふと、僕は彼女の事が好きなのかもしれないと思った。

今になってそんな事を思っている僕自身を少し憎らしく思いながら、彼女を両の腕に収め眠りについた。

 

土曜日

週一の休みが明けた今日。

起きる時間はいつもと同じだったが、隣には彼女がいた。まだ心地よさそうに眠っている。

起こさないように布団から出て煙草を燻らす。

 

彼女の梅粥効果か、昨晩出すもの出したからか、体調は少しばかり良くなっていた。

熱も大分引いたようだった。

今日と明日の仕事を乗り切れば、『carotid artery』のライブが待っている。

頬を叩き喝を入れて支度を始める。

残り二本にまでなったチョコチップパンを1本だけで食べ、これまた彼女を起こさないように家を出る。

 

彼女は今日休みと言っていたし、鍵の場所とかだけ連絡しておこうなどと考えながら、最寄り駅までの道を歩く。

 

平日よりは空いた電車に乗りこみ職場に向かい、平日よりは空いた電車に乗りこみ家に帰った。

 

家に戻る頃には彼女はもういなかったが、代わりに

「お粥まだ余ってるので食べてください。お大事に」との書き置きが、栄養ドリンクと一緒にテーブルの上に置かれてあった。

栄養ドリンクが少し汗をかいて、文字を滲ませてしまっているがそれは見なかったことにしてあげよう。

 

一通りことを済ませ、梅粥を食べて寝た。

明日は、ようやくライブの日だ。

 

 

日曜日

今日はいつもより三十分ほど早く起きた。

早く起きたからといってすることがあるわけではないのだが、早く起きた。僕もまだ、何処か幼いところがあるのかもしれない。

頭の痛みは今はほぼなくなった。ただ、頭の中になにかがいる。いや、ある。うまく言えないようなそんな違和感は残っていた。

だが、気にするほどではない。

朝の一服を終えて、僕はチョコチップパンを手に取る。

いよいよ最後の一本になった。帰り際にまた買ってこないといけない。

頭痛に耐えつつもよく一週間食べ続けた。よくやった僕。

そんなことを思いながら、節目のチョコチップパンを頬張る。

相も変わらず美味しくはないが、一週間も食べ続けた僕からすればこの微妙な味が 乙 なのだ。

 

今日はいつもの荷物に加えてタオルを持って家を出た。勿論財布の中にはライブのチケットを入れて。

 

いつも通りに電車に乗って、いつも通り雑居ビルに入る。

いつも通りに仕事をして、いつも通りに仕事を終える。

 

ただ、この先はいつもと違う。

いつもなら仕事を終えるなりそそくさと新宿駅に向かうが、今日は駅とは反対方向に向かう。今日のライブ会場の「LIVEHOUSE バーサーカー」は職場から見て、駅とは反対方向に少し行ったところだ。

 

バーサーカーに着くと結構な人が列を作って並んでいた。

僕も列に並び、入場を待つ。

少しして入場の案内がかかった。

受付でチケットとドリンク代を渡すと、半券とドリンクチケットが返ってきた。

受付の奥にある重い扉を開けると、ステージのある部屋があった。

SEで洋楽がかかっている。

煙草の煙が蔓延した室内。エアコンが少し効きすぎている室内。ライブハウス独特の空気が僕を包んだ。

ドリンクカウンターでハイネケンを頼み、会場の後ろのほうへ行く。

僕はライブを見るときいつも後ろだ。後ろでお酒を呑みながら体を揺らしている。

前列のぎゅうぎゅう感があまり得意ではない僕なりのライブの楽しみ方だった。

 

少しするとSEで流れていた洋楽が静かに消え、会場全体が暗くなった。

いよいよライブが始まる。

 

スモークの焚かれたステージにメンバーの影が写り、ドラムが勢いよくカウントをする。

ー 圧巻だった。生きていて良かった、「今は」そんな風に思えた。

ハイネケンを呑むことも忘れて見入っているうちに、いつの間にか最後の曲の時間だった。 

楽しい時間はいつも一瞬だ。だからこそ、その一瞬がとても鮮明に残る。

 

「最後の曲です。新曲です。」

演奏前にボーカルが短くいった。

乾いたエイトビートから始まったその曲は、このバンドには珍しい英詩の曲だった。

歪んだギターに乗せ歌うその言葉を、僕は自分の持つ英語力をフルに使って聴く。

 

 

Sometime I feel this life isn't so bad

I don't know the reason, but I've felt it

Just breathing, correpted life

Boring sleep, getting drunk at night

ー無機質な生活に、ふと愛着が湧いたりする

 原因は分からないが、そんな時があるんだ

 

惰性で続ける呼吸。毒される生活。

ぬるい眠りと、夜の酩酊。ー

 

 

不思議な曲だった。言葉一つ一つが僕にはまっていくような。そんな感覚。

胸が少し苦しくなる。

 

I'll be aware of LIVING for the first time in the moment I'll die

The monent I'll die

The moment I'll finish dreary breathing

I'll hope to be longer

How stupid I am...

ー惰性で続けた呼吸が終わる時に、無様に明日を思うなら

その時初めて「生きてる」ことを知るんだろうよー

 

まるで、僕の生活を唄っているようだ。訳も分からず涙が出てきた。

 

Just breathing, correpted life

Boring sleep, getting drunk at night

 

繰り返し叫ばれる言葉の羅列。

 

ー 惰性で続ける呼吸。毒される生活。

ぬるい眠りと、夜の酩酊。

 

気が付くと曲は終わっていて、演奏の代わりに拍手の音が会場を包んでいた。

 

バーサーカーを出て新宿駅へ向かう。

駅に向かう途中も、電車に乗り最寄駅へ向かう間も、僕の頭の中には先ほどの歌がずっと響いていた。

 

意味も、意義もない。酒と煙草に寄りかかり、生きていければいいと。

なんとなく。なんとなく惰性で続けた呼吸。生活。

あの歌のいうように、僕の生活も毒されていたのかもしれない。

ニコチンでもアルコールでもない。惰性という毒に。

 

その時。頭の中にいる何かが少し動いたような気がした。

 

僕自身に対してに後ろめたさからか、胸に広がるもやもやを消したいからか、はたまた両方か。

体が酷くアルコールを欲していた。

 

最寄り駅で降りると、僕は駆け足でいつもの居酒屋に向かった。

少し荒く入り口に入り、挨拶もそこそこにビールを頼んだ。

 

ビールはすぐに僕のもとにやってきた。

それからしばらく、ろくに食べもせずにアルコールとニコチンを体に入れ続けた。

 

結構な量を呑んだ。視界が霞んでいる。

ー 夜の酩酊。

また、あの曲が頭に流れる。

 

これでいいと思っていた。これでいいと思っていた僕の生活。

違う。これでいいと言い聞かせていただけだった。

僕自身に逃げ道を与えただけだ。その結果が、このぬるい生活だ。

酷く、情けない。

 

また、涙がこぼれた。

その時だった。頭の中にいた何かが急に消えた。

一瞬頭が真っ白になる。そして、酷く鈍い痛みが頭の内側を襲った。

体から力が抜け、居酒屋の床に倒れこんだ。

まともに呼吸ができない。苦しい。

 

店主が僕の名前を呼んでいる気がする。

すぐそこにいるはずなのに、とても遠くから呼ばれているようだ。

荒い僕の呼吸の音だけが、体の内側から聞こえる。

 

「チョコチップパン買って、帰らねぇと。」

僕は苦しさと痛みの中でそんなこと思っていた。

「明日からも、また食わねぇと。」

視界が暗くなった。呼吸の音ももう聞こえない。

 

I'll be aware of LIVING for the first time in the moment I'll die

The monent I'll die

The moment I'll finish dreary breathing

I'll hope to be longer

How stupid I am...

ー惰性で続けた呼吸が終わる時に、無様に明日を思うなら

その時初めて「生きてる」ことを知るんだろうよー

 

音も光もない空間に、あの歌詞が浮かんだ。

吹っ切れたようにどこか少し可笑しくなった。

 

「あぁ、俺。ちゃんと生きてたんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーだから、人間って一生にする呼吸の回数って決まってるんだってよ。

なんなら、吸う煙草の本数とか。SEXの回数も決まってんのかね?」

「一生に食べるチョコチップパンの本数とかもですかね」

「ん?チョコチップ?ーってか、お前さっきからずっと携帯いじくって何してんの?」

「ちょっと、チョコチップパンとくも膜下出血患者のお話を…」

「なんだそれ。」

「…先輩は今の生活は『なんとなく』ですか?」

「あぁ?さぁーなー。ただ、必死こいて生きてるよ」

「…仕事しますか」

「あぁ。だな」

 

僕たちは燻らせていた煙草を消して喫煙室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短く書くつもりが、短篇小説みたいになってしまった。珍しく頑張った。

職場の人と珍しく真面目っぽい人生の話をしていた時に浮かんだお話です。

ちなみに僕はチョコチップパン童貞ではありません。

文章書きたい。

 

 

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※2017年6月17日 誤字訂正

 

やる気スイッチ。彼らは何処にいるんだろう。

やる気が出ない。ほんと、ミリグラムも出ない。

 

気が付くとぼーっとしている。

何に対してにやる気なのかってのが重要で。

今書き進めている小説の入稿期限が今月末なんだけども、これが中々書き進まない。

PCに向かい合っても、キーボードに手を置くだけ。

少ししたらハイライトに火をつけて、ぼーっとしてる。シャドウバースの実況見てる。

最悪片手にアルコール持ってる。

非常によくない。

 

今はやる気を向けるべき矛先が小説に向いてるが、矛先が変わってもやる気の出なさは変わらない。

 

やる気ってどうやって出すのか。

 

でも、こんな僕でも異常にやる気が溢れ出て、頭が爆速メーリーゴーランドのごとく周り、手が6本くらい増えて、神仏の類へと昇華するときがある。

ただ、都合よくそんな僕的ゾーンに入るのは中々難しく。

きっかけもわからない。ふと、そんな時が来るのだ。

 

ふぁ!

こんなことを唐突に言うくらいだ。

今これを書くことすら、やる気がでない。

だって朝4時だよ?寝させてくれよ。

 

なんの脈絡もないめっちゃいい曲で。おやすみなさい。

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よろめく素人の小言。

以前のはてなブログを消してまた新しくブログを始めました。

なんとなくです。

こんなことをしてたら時間が過ぎてしまって困っています。やべぇ。

 

ブログタイトルの由来は、敬愛する道尾秀介さんの

「シロウト作家の訴え」になんとなく似てる雰囲気にしたかったのでこれになりました。

 

ふわっと、ふらっと書き進めていきます。

 

以前のブログで書いていた記事を一部こっちでも掲載しなおしたので、よければご一読を。

 

言葉を書く機会が欲しくてたまらないこのごろ。

 

今回は、あれです。挨拶です。

おやすみなさい。

 

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小説の魅力。

 

タイトルで小説と言い切ったけど、文章なら大半に通じて思う、言葉だけだからこその魅力を書きたいと思います。

朝4:26。眠いです。

 

僕が思う一番の魅力は、

『読み手によって解釈や情景が大きく異なる』ことだと思う。

「白い自転車。ー並んで停泊している漁船の、集魚灯や無線アンテナの向こうに見える海沿いの道を。左から右に進んでいく。」ー道尾秀介/球体の蛇 より抜粋。

急だが、この一文を読んでどんな風景を想像しただろうか。

僕は、宮城県塩釜市、松島市辺りの港沿いの通りに似た景色を、少し美化したようなありもしないだろう景色を想像した。

続いて、

「練習を終えたらしい別のバンドが、奥のブースから賑やかな声を交わしながら出てくる。まだ高校生くらいだろうか。ー(省略)ー幼いミュージシャン達は口々にカウンターに向かって挨拶をし、待合いスペースのテーブルを囲んだ姫川たちの脇を過ぎてった。」ー道尾秀介/ラットマン より抜粋。

また道尾秀介とか思った奴。ご名答!その通りです。異論は認めません。

ところで、この文を読んで今度はどんな風景を描いたろうか?

今回はバンドスタジオという舞台であるからして、想像しにくい人もいるのではないだろうか?

僕は吉祥寺にあったMikellzというスタジオをまんま当てはめた。

 

二つ例を並べたが、読み手が各々描いたものが同じということは絶対にない。言い切る。絶対だ。

仮に、場所が同じだったとしよう。スタジオの例で話す。

10人が皆、奇跡的に同じスタジオを想像したとしよう。

だが、この時各々が一致してるのは場所だけだ。

どの角度の視点から見ているだろう。

誰を想像してるだろう。

人物の顔、表情。

コントラスト。

焦点。細かい物の内容、場所。

細かい描写全てが一致することはありえない。

言い換えれば、誰とも同じベクトルで共有することができない。

絵を書いたり、映像にすれば話は別だが、それ以外の手法で他人と同じ情景を共有できないのだ。

「僕は〇〇の△△からの視点で、そこには✕✕と□□がいて…」

と、自分の描写を口頭や文面で表しても結果は変わらない。それを受け取った側の中で、また別の描写が浮かぶだけだ。

だが『それこそが、小説の魅力の内である』と、僕は思う。

 

自分だけの世界だ。

書き手が提示した色々なパーツを基に読み手自身がそのパーツで小説の世界を構築していく。そう言われると面白くないだろうか?

書き手にすら分からない世界が広がっていく。もしかしたら書き手が描いた景色よりも精密で、素晴らしい世界を読み手が構築してるかもしれない。

 

でも、映像や絵の場合ならどうだろう。

どちらも僕は嫌いじゃない。

が、双者ともに受け取る側はその映像等に映されたままの世界をその作品の世界として受け取る。それが醍醐味の一つだから否定はしないが、悪魔で小説と比べた時にだ。

僕は、自分で想像する方に魅力を感じた。

 

しかし、想像というのは素材が必要だ。

素材というのは、書き手の表現だったり、一番大きいのは読み手の経験だ。

スタジオの例をまた使うが、バンドスタジオに行ったことがない人がその風景を一から構築するのはなかなかに難しい。

内モンゴル自治区の人がイタリアの洒落た海沿いを想像しても歪になるだろう。馬鹿にはしてないよ。

何が言いたいかというと素材が少なければ少ないだけ、想像した世界も貧相になる。

素材が多ければ多いだけ、想像も広がるし精密に豊かになるだろう。

 

世界を旅した知識人が想像した情景は相当に美しいだろう。

ほら、こんな事を書いていたら旅をしたくなってきた。

知識を深めたくなってきた。

いい事づくしだ。

 

こんな風に文字だけだからこその大きな魅力があると僕は思っている。

更に加えるなら、

「小説は何度読んでも新しい」

と、どこかで聞いた記憶があるがまさにその通りだと思う。

時間を重ね、年をとれば、人は相応に色んな経験を積む。

それが素材となって、いつか読んだ小説のいつか想像した世界に新しい彩りや感情を加えていく。

そしたらそれは、全く別の世界だ。

極端なことを言えば、浅草でもんじゃを食べていた主人公がイギリスでフィッシュアンドチップスを食べてるような。

うん、なんか違うね。

 

区切りが良さそうなので今回はここまで。

また書くかもね。

 

皆、本読もうぜ。

面白いよ本の世界は。

読み手次第でどうとでも変わる。

道尾秀介がオススメだよ。道尾秀介

さぁ本屋へ行こう。

 

 

最後は小説的世界感のバンドの曲で締めようね。

 

 

アディオス。

 

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※この記事は以前のブログで書いた記事の一部です。

ブログ変更の際に新しいこちらのブログで再投稿しました。

※2017年6月22日 一部改変。